メスの木を待ち続けて1世紀以上。世界で最も孤独な「ソテツ」


気になる記事です。植物エモ
イギリスの王立植物園『キューガーデン』に、世界一孤独な植物がいる。それは、古代ソテツ類のエンセファラルトス・ウッディ(Encephalartos Woodii)と呼ばれるオス木の標本で、南アフリカからやってきた。
 その木は、1世紀以上にわたり、交配できるメスの木を待ち続けてきたが、今もまだ子孫を作り出しその種を繁殖させることが叶わないままだという。
 なぜなら現存するのはこのオスの木のみで、研究者が探し回ってもエンセファラルトス・ウッディのメスの木を見つけ出すことができないからだ。


https://youtu.be/VtziMzq-nnk


交配できるメスの木もなく、世界で最も孤独な植物に
 それから1世紀以上にわたり、このオスの木は交配できるメスの到着を待ち続けていた。しかし、研究者らの精査にも関わらず、伴侶を見つけることができなかった。
 植物によっては、オスとメスの両方の器官を持っているものも存在するが、エンセファラルトス・ウッディは、繁殖するには伴侶が必要だ。
 エンセファラルトス・ウッディは、交配の準備ができる時になると花粉でいっぱいの大きくカラフルな円錐形を作り出す。熱を放射したり、受粉者を惹きつけるにおいを生成したりすることで合図を送っているのだ。
 しかし、肝心のメスがいないと交配は不可能だ。結局、子孫を作り出し、その種を繁殖させることが叶わないまま、キューガーデンのエンセファラルトス・ウッディは世界で最も孤独な植物と言われ、最後の種となってしまう可能性が高いという。



クローンは存在するがオリジナルとしては最後の1本
 エンセファラルトス・ウッディは、実はクローンが複数存在する。そのため、世界中の植物園で、クローンのソテツを見ることができ、近縁種との交配も可能だが、それから生まれた子孫は真のソテツ種とは言えない。
 研究者たちは、これまでにもアフリカの森林でメスのエンセファラルトス・ウッディを探して精査を行ったが、不成功に終わっている。
 生物学者リチャード・フォーティー氏は、「確かにこれは、世界で最も孤独な植物といっていいでしょう。この木が、あとどれぐらいの年月を生きるのかは誰にもわかりませんが、1本のみで生き続け、後継者を持たない運命にあるのは残念なことです」と語っている。